CROSS TALK

プロデューサー対談実施!!

『ヘブンバーンズレッド』プロデューサー 
柿沼洋平
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舞台『ヘブンバーンズレッド』プロデューサー
(ライトフライヤースタジオ) 
井上智哉
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舞台『ヘブンバーンズレッド』エグゼクティブプロデューサー 
下浦貴敬
――まずは何故ヘブンバーンズレッド(以下ヘブバン)を舞台にしようと思ったのでしょうか?

顔合わせの時にお話したんですけど、僕は演出を担当している西田さんと実は元々同じ劇団で、付き合いはもう24、5年になるんです。プロデューサーと演出家として、劇団以外にも年間数本ずつ作品を一緒に作る関係がずっと続いていて、その中で結構『最近何面白いの?』みたいな、何に興味を持っているかの話を、彼はクリエイターとして、僕もプロデューサーとして、よくしているんです。
メインストーリー第三章がリリースされた頃に『ヘブバン知ってる?』って西田さんが言ってくれて。舞台とは関係なしに興味を持ってやり始めて、『舞台どうかな?』って話をしたんですよね。そこが本当に1番最初のきっかけでした。
そこから、実際に舞台にするにはということで、やっぱりビジネスの側面や、どういう風にお声がけしていくのが良いかみたいなところから、企画書を作りながら、ご提案させていただいたというのが経緯です。
やっぱりその中で舞台化するにあたって、ストーリー部分や、音楽、もちろんアクションも。キャラクター同士の関係値や、コメディ要素も『こうやったら面白くなるんじゃないか』という想像がすごくついたというか。なので割と西田さんと話していて、『舞台にしたら面白くなるかな』というのは、実は私たちの中では結構前からありました。

――ライトフライヤースタジオさんは舞台化の話をお聞きになってどう思われましたか?

『ついに、きたか!』という感じでした。元々ヘブバンを立ち上げた時に、他のメディアになってもいいように、キャラクター1人1人や設定、ストーリーをしっかり作っていこうという方針を立てていました。舞台にしたら面白くなるだろうとは思っていたんですが、一方で、難易度の高さも感じていました。 だからこそ、こちらから無理やりやってくださいっていうものではないなと思ったんですよ。さきほどのお話でいただいたようなパッションが、制作していただく側の方々にないとやりきれないと思っていました。そんな中でお話をいただいて今に至ります。だから、すごく嬉しいです。

勝手に最初盛り上がってすいません(笑)

――井上さんはいかがでしょう?

ヘブバンの世界がまた広がるということがすごく嬉しかったです。とはいえ、どうやって舞台化するのだろうかとも思っていました。そんなときにオフィスエンドレスさんが制作されている舞台を拝見する機会がありまして、原作に対する理解度や再現性 、そのうえで舞台ならではの表現を実現しているのがすごく面白いと感じました。そのタイミングで是非ともご一緒させていただきたいという思いがすごく強くなりましたし、 演出の西田さんもリリース時からヘブバンをプレイしてくださっていることもあり、みなさんがヘブバンを深く理解してくださっているなと感じていました。なので、安心してお任せできるという思いもありましたね。

リコリコ(舞台『リコリス・リコイル』Life won’t wait.)と東リベ(舞台『東京リベンジャーズ―天竺編―』)を見てもらったんですよね?

そうですね!

あれは弊社で言うと結構両極端なところではあるんですけど、アクションや、スピード感というところはヒントになったり、お客さんの熱量っていう部分でも、説明するよりも、客席で見てもらって、実際に感じてもらった方がわかっていただけると思っていたので、見ていただけてすごくありがたかったです。

舞台を見させていただいた後に、個人的に観劇レポート を誰に送るでもなく作っていました。なにかヘブバンにも活かせないかなと思いつつ、 衝動的に書いてましたね。やっぱり自分もあの熱量にやられたんだと思います。本当にそれが全てだなって今、改めて思いますね。

嬉しいです!

――井上さんは今回の舞台を進めるうえで原作側という立ち位置で印象に残ってる事はありますか?

一番最初はどう作っていきますか?っていうところの整理から始めました。我々原作は2社(Key/ライトフライヤースタジオ)なので、どうしても監修に時間がかかってしまう。そういう結構リアルなところを色々と調整しました。
Keyさんからも舞台化に対して『いいですね!是非やりましょう!』といったお声はいただいていたので、困ったところも特になく進めることができました。

嬉しいですね。 僕ももう20年近く前、いわゆる2.5次元っていう単語が今みたいに出来上がる前から、アニメやゲーム原作で舞台をつくっていて、原作さんとお話する中で『舞台化したいんですよ』って言いに行った時も『どう舞台化するの?』とよく疑問に思われます。そういう時に、歩み寄っていただけて一緒に『舞台に還元したらこうですよね?』みたいな会話ができるパターンと、『舞台で表現なんかできないでしょ?やれるもんならやってみろよ。』みたいなパターンと、二分化されるんです。特に昔は、今ほど舞台化はなかったので『どうやってやるんだよ?なんか知らないジャンルの人間が話しに来た』みたいな扱いを受けることも正直ゼロではなかったです。ですが今は、「2.5次元」というフレーズがあって、僕とか西田さんとかは原作へのリスペクトも込めたうえで、演劇で表現しています。今回お話していく中で、演劇に対してのリスペクトもすごく感じるので、そういう部分ではすごくいい環境でやらせてもらっているなっていうのを、特に感じています。

原作が2社だと大変な部分もあるけど、逆に良かったなと思う部分もあります。元々Keyさんと組んだのも、お互い1社では成し遂げられないことをお互いに任せ合うためです。Keyさん、麻枝さんは世界観やシナリオ、音楽を作る。僕らはゲーム という形でそれを 届ける。 お互いの強みを活かすことにより、単体ではできないことを実現する。そうして生まれたのがヘブバンです。だから、餅は餅屋じゃないですけど、そういうものに対するリスペクトは結構強いかもしれないですね。

今すごく作りやすい環境でやらせていただいてるなっていうのは、プロデューサーとしてはすごく思います。ありがとうございます。

――今回ヘブバンを未プレイの方も観劇されると思いますが、ヘブバンキャラの魅力を教えていただけますか?

これは僕自身が最初に驚いたことでもありますけど、みんなめちゃくちゃ個性的なことです。どの作品もそうだとは思うんですけど、ヘブバンのキャラクターたちは本当に個性的だと思います!
美少女が、ポンコツ諜報員だったり、天才ハッカーだったり、戦艦の元艦長や、虎がいたりなど、なかなかない設定だと思っています。そこの魅力というか引き出しの多さは本当にKeyさんならではですが、ゲームの中でもイベントストーリーなどでそれぞれのキャラに焦点があたるので、結構堀りがいがあるんじゃないかと思います。

そういう部分では、もちろんゲームで音楽を楽しんだり、ゲーム性やシナリオ、会話など色々ありますけど、やっぱり演劇にする以上、生身の人間が演じるっていう部分がやっぱり一番違うところだと思います。そこが僕らが大事にしていくところなので。
生身の人間が演じるという、活字にすると、すごく簡単な言葉かもしれないですが、それを本当に生きているように、画面から飛び出てきたなどと言われるような、本当にそこに命を吹き込むんです。俳優さんももちろんそうですが、そことはまた違う角度で立体化させる、生きさせる、その場で呼吸させるというところは、演出の西田さんはとてもうまいです。オーディションなどでも結構な日数をかけて一緒に選ばせていただいたんですが、今回オーディションで初めましての方たちも非常に多いなかで、普段は全然キャラクターと違うのですが、ステージ上で稽古してると『まんまだな』という方がいたり、本当に演劇でチャレンジしていく面白さみたいなものを、彼女たちを見ていてすごく可能性を感じていますね。

――井上さんは実際にビジュアル撮影もご一緒いただきましたが、再現度はいかがでしたか?

すごく印象に残っていることがありまして、衣装の生地選びやウィッグのカラーの選びの時に、実際にキャラクターの髪色がどこまで表現できるのか、衣装が舞台上で映えるのかが不安になって、素直に相談をさせていただきました。その際に、照明でだいぶ印象が変わるというお話をいただきまして、撮影にも同席させていただいたんですが、『ほんとに照明でこんなに変わるんだ』と思いました。また衣装も再現度が高くて、細かいところまでしっかりと工夫をされていたので、『本当にこれはすごいぞ』と思いました。撮影の際に社内のアートメンバーも同席させていただいたんですが、すごくテンションが上がってましたし『本当に生で見れて良かったです』って言ってくれて、関係者が盛り上がるくらい、本当にすごく良いものを作ってくださってるなと思ってます。

――本日稽古場に初めて見学に来ていただいて、実際に見ていかがでしたか?

最初に思ったことは『想像よりアクションすごい』ということです。やっぱりヘブバンとしては物語のイメージが強かったのですが、結構ガチガチに殺陣というかアクションをしていて、しかもしっかり立ち回りとか、物理的な視点で、ちゃんと鎌の遠心力やこう動いたらこうなるっていうのもすごい凝っていたので、見てるだけで楽しかったです(笑)

ビジュアルでお見せして、脚本もお見せして、今日アクションもお見せして、一個ずつが今見ていただいてる部分ではバラバラのパーツになっています。僕らはこれを長年やってるので、頭の中で結びつけながら実際に彼女たちがこの衣装を着てステージでこういう風に動いて、みたいなのを想像してやっているんですが、それがいきなり『釣ってるな』『黒幕だしな』みたいになっちゃうと伝わりづらいと思ったりしてて、ただそこの部分も含めて、一緒の目線で今見ていただけてるっていうことがわかったので、それは非常にありがたいし心強いなって思いました。ここからは、より全部が立体になっていく。衣装もついて、映像や音響、照明もしっかりと入り形になっていくので、本当にこの段階で色々お話しながら、原作の観点でアドバイスいただけるというのはすごくありがたいし、いい環境で作らせてもらってるっていうのに尽きると思うんです。

稽古のタイミングでの様々な修正に対して、キャストさんが答えてくださってるところを見てると、どんどんクオリティが上がっていくんです。そういうのを見てると純粋にすごいと思いますし、ここから先どうなっていくんだろうという楽しみや期待もあります。あとセラフの出し方も『舞台ではこうやってセラフ召喚を表現するんだ』と感動しました。舞台公式Xにも稽古写真が上がっていると思うんですが、ぶんちゃんのカニの手の使い方がいい感じになっていたり、そういう舞台でしかできない表現も含めてすごく魅力あるなと思いますね。

ホッとしました。ぶんちゃんのところ含めてなかなかシュールな稽古場になってます(笑)

その辺も含めて、舞台だからこその見どころをたくさん作っていただいていまして、監修しながら我々としても楽しませていただいています。

――今回メインキャストはオールオーディションで、最終オーディションも5日間かかりました。そこでこだわったところをお話ください

一番最初は書類審査から始めたんですが、結構な人数を見させていただいた中で『原作がすごく好きなんです』っていう熱意のある方もたくさん見てきました。そのうえで、最終的にいろんなバランスであったり、楽器演奏の経験がある方だったり、逆に演奏やその楽器の経験はないという方も、色々可能性を含めて見せていただき決めていきました。原作の方々にも全日程でご参加いただいたので、『ここはこのバランスでいくとどっちですかね?』や、本人の希望はこのキャラクターだけど、違うキャラクターのセリフを読ませてみたら『意外とあれ良かったですよね』『ハマった感じしましたよね』みたいな話しを結構しました。
あと例えば豊後役の小倉さんですが、オーディションの時に、いきなりだけど登場のシーンを演じてもらったところ、すごい作り込んできたんですよ。それを僕が見て、『これはもう結構安心感あるよね』と思うぐらいでした。人によっては、もう一発目に『ここだ!』っていう人もいれば、他の人とのバランスで色々入れ替えたりパズルしながらで決めていったところもありました。そういう部分ではすごく大変な作業ですが、完成形を想像しながら西田さんを含めてああだこうだ一緒に楽しくキャスティングさせてもらった感じです。

私は正直もう少し、意見が割れるのかなと思ってたんです。その場合にはどうしようみたいな事もちょっと思ってたんですが、蓋を開けてみれば、全然意見が割れなくて驚きました。

そうですよね!

ここまで一致することがあるんだと思いつつ、みんな目線合ってるんだなって思って、安心しました。

他の案件だと正直割れることもあるので、かなり珍しかったです。最終候補を本当に確認していく流れでしたね。『こういうバランスの選定もあるかなと思うんですけど』という意見に対して、一緒になってパズルをしていくことができたのはすごくよかったですね。

意見が割れてしまった時に、どうしても原作の立場が強くなってしまうということもあったりもするので、自分としてはそれで押し通すみたいなことはやってはいけないと思っていたんです。結果としては、本当に綺麗にピースがはまって、キャスティングはすべての基盤なので、そこがスムーズに行ったのは、本当によかったなって思いました。

そうですね!

――今回生演奏が発表されていますが、そこに対する思いをお聞かせください

ヘブバンの楽曲を演奏することの難しさはわかっていたので、本当にやるんですか!?っていう思いは正直に言うとありました。ただ、生演奏までやってこそヘブバンを舞台化することに意味があるんですという熱いメッセージをいただいて、今回実施いただくということになりました。演奏のレッスンも拝見させていただいてるんですが、初心者の方もすでにしっかりと弾ける状態になっています。皆さんの努力はもちろんですが、ここまで仕上げてくださってる熱量は本当にすごいです。早く皆さんに見ていただきたいです。

――今後実際に舞台化されるにあたって、観客の皆様にどういうふうにお帰りいただきたいか、どんなふうに受け取ってもらいたいなっていう思いがありますか?

最初の話に立ち返るんですが、いわゆる2.5次元と呼ばれるジャンルは客席が95パーセントぐらい女性なんです。演劇の業界に20年くらいいて、この先50歳、60歳になるまで僕や西田さんはこの業界に居続けることしかできないと思うと、僕らと同世代だったり、僕らの下の世代の男の子にも見てもらいたいなって思います。いいおじさんが、何年がかりで企画して、本番前の1ヶ月半に超集中して、毎日そこに全力で積むことしか考えずに作る期間があって作り上げたものが、もちろん評価してくれて見に来てくれている女性ファンの方々に届くことも嬉しいですが、男性ファンにもせっかくだから、遠慮しないで見に来てほしいと思うところがあります。それが最終的に僕らがやってく上で、5年後、10年後に演劇っていう部分のフィールドがもっと広く、もっと深くなればいいなと考えることがあります。そういう部分では、今回原作のファンの方で舞台をあまり見たことない方も、見に来てほしいなってすごく思います。そこに対して恥ずかしくないものを作っている自負もありますし、きっと原作が好きであれば尚更世界が広がるものを作り上げている工程にいると思って いるので、いろんな生の良さっていう部分ももちろんあるので、今回東京の2週間弱っていう限られた期間でしかないしっていうところもあるんですが、例えばそれが叶わなくても配信で、配信には配信の良さもあるので触れてもらうっていうことが何よりも大事かなと思っています。ここから先、もうあと数週間ですが、今作り上げてる途中で、この舞台でのヘブバンっていうのに対する期待がすごく、1ユーザーとして、1ファンとしてすごく上がっているのでおじさんたちがそこまで言うんだったら、じゃあちょっと見てみようかと、これを読んでる人に届いたらいいなと、今話しててすごく思いました。

僕も下浦さんに近いかもしれないですが、やっぱり多くの人に見てほしいという思いがあります。稽古場を見学させてもらって、舞台の可能性を凄く感じました。アクションシーンもそうですが、実際の言葉の掛け合いの時に、ゲームでは立ち絵があって、そこにボイスで掛け合いされますが、生身の人間の場合、当然その間も動いてるわけです。茅森だったら『ようカレンちゃん』みたいに肩組んだりとか、生身の茅森だったらこんな動きをするのかみたいなものを是非体感してほしいです。その体感はどうしても、舞台を見てくださらないとわからないので、僕としては自分ができることをして、後々口コミとかで『そんな良いんだったら、見ておけばよかった』という機会損失を1人でも減らしたいです。なので、できるだけ事前に魅力を伝えて、見てくれた人たちが見てよかったねって思ってもらえるような舞台『ヘブンバーンズレッド』になるといいなと思ってます。

今回SNSや情報局のコメントでも『初めて舞台見に行きます』っていう方であったり、逆に『舞台をきっかけにヘブバンを始めました』っていうお声もありすごい嬉しいですし、その人たちの期待があるので、そこにはちゃんと応えていきたいと思ってます。その上で、皆さんには、生の迫力であったりとか空気感みたいなものを感じ取っていただいて、ヘブバンの魅力もそうですし、舞台の魅力も存分に味わっていただいて、両方のファンになっていただけると1番いいなと思っています。